研究概要 |
本研究は各動物種の細胞内オルガネラに局在するタンパクのcDNA単離するためのベクターの開発を目的としてはじめた。研究の第一段階として膜結合性タンパクのcDNAを単離するためのTrans Membrane Domain Trapping vecter (TMDTベクター)を作製し、膜タンパクのcDNAを単離するためのシステムを構築した。膜タンパクは、細胞膜や小胞体膜等の生体膜を構成するタンパクであり、その多くには膜貫通部分(TMD)が存在する。TMDは疎水性アミノ酸に富んでおり、脂質二重膜と親和性がある。今回作製したベクターは、マウスIL2レセプターα(IL2Rα)もしくはβ(IL2Rβ)のTMDを除いたcDNAを分泌タンパクとして発現させるベクターであり、そのC末端側にin-frameにマルチクローニングサイト(MCS)、T3-,T7-ポロモーター配列を導入してある。MCSにTMDを有するcDNAが挿入されると、分泌型IL2RαもしくはβとcDNAの融合タンパクは膜結合性となってCOS細胞膜表面にトラップされる。これに、蛍光標識した抗IL2R抗体を反応させることにより、膜結合型IL2Rを発現する細胞を識別、単離することができる。さらに単離したCOS細胞からプラスミドDNAを抽出することによって膜結合性タンパクのcDNAをクローニングできる。各種膜タンパクcDNAをTMDTベクターに挿入し、TMDを含む場合、含まない場合で比較した。すなわちこれらの融合遺伝子をCOS細胞に導入し、抗Mouse IL2Rα抗体を用いた蛍光抗体染色によって細胞膜上にトラップされているかどうかを蛍光抗体法によって検討した。その結果、Type I-、Type II-、P-450 Typeの一部、GPI anchor Type、Multi-transmembrane Typeの融合タンパクはTMD領域がin-frameにクローニングされていればトラップされることが示された。さらに本法を応用してマウスの13日胚脳で発生分化特異的に発現する膜タンパクのcDNA単離を試みた。その結果、2つの新しい膜タンパクのcDNAを単離することができた。このことから本法は膜タンパクのcDNAを単離するための有効な手段となることが示された。
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