研究概要 |
血小板活性化因子(PAF)は生理活性脂質の一つではアレルギー反応、免疫反応などの主要なメディエーターである。PAF受容体はGタンパク質を介する7回膜貫通型の受容体であり、複数のGタンパク質に共役して多彩な細胞内情報伝達機構を動かすことが明らかとなっている。PAF受容体の一次構造は決定されたが、リガンド結合部位、Gタンパク質との共役の機構、C末端に存在するリン酸化部位のはたしている役割などの構造と機能の関連についてはほとんど解明されていない。 今回我々はPAFの受容体への結合様式を探る目的で次の実験を行った。PAFは分子内にリン酸基の正電荷、コリンの負電荷をもっており、PAF受容体の膜貫通部位に存在する荷電をもつアミノ酸残基がその結合に関与している可能性が高い。そこで先ず、膜貫通部位に存在する荷電をもつ極性アミノ酸残基をアラニンに転換した変異体をCOS細胞に発現させ、アンタゴニストに対する結合能は変わらないがアゴニストに対する結合能が大きく変化する変異体(高親和性7個、低親和性7個)を得た。次に、代表的な3個ずつの高親和性(N100A,T101A,S104A)、低親和性(H188A,H248A,Q276A)の変異体をCHO細胞に安定的に発現させ、膜標品を用いた結合実験を行うと同時に、細胞内情報伝達系の解析を行った。高親和性の受容体はより低濃度のPAFにより情報を伝えることが明らかになった。その内の1つN100Aは通常は不活性なPAFの前駆体であるlyso-PAFに対しても反応するようになっていた。これらの実験の結果と3次元立体モデルの解析により、PAFの受容体への結合部位は膜貫通部位であり、グリセロール骨格のC1にエーテル結合するアルキル基は深く膜貫通ドメインに挿入され疎水性アミノ酸残基と疎水性結合を行い、リン酸基の正電荷、コリンの負電荷は膜貫通部位の荷電を持ったアミノ酸残基とイオン結合する可能性が示された。
|