研究概要 |
[1]本実験には,雄性ICR系マウスを用いた。アラキドン酸代謝産物あるいは起痒物質をマウスの吻側背部に皮内注射し,注射部位とその周囲を後肢で掻く動作を痒み反応の指標として数えた。Substance P(100nmol/site)で惹起される痒み反応を,dexamethasoneとbetamethasoneの経口投与が用量依存的に抑制した。Indomethacinとdiclofenacは,1-10mg/kgの経口投与によりsubstanceP反応を増大する傾向を示し,局所前処置により有意に増大した。リポキシゲナーゼ阻害薬zileutonあるいはLTB_4受容体遮断薬ONO-4057の経口投与がsubstance P反応を抑制し,LTC_4/D_4/E_4受容体遮断活性を有するONO-1078は抑制作用を示さなかった。LTB_4単独の皮内注射が掻き動作を惹起したが,用量反応関係がベル型となった。PGE_2は,単独では掻き動作を惹起しなかったが,serotonin(10nmol/site)の痒み反応惹起作用を増大した。PGD_2,PGF_2αおよびPGI_2は,単独効果もserotonin作用の増大効果もみられなかった。Indomethacin(0.1-10mg/kg)の経口投与が5-HT(100nmol/site)の掻き動作惹起作用に影響を及ぼさなかった。以上の結果から,〓痒性疾患のうちで皮膚表層におけるLTB_4あるいはPGE_2の産生が増大しているものではこれらのエイコサノイドが痒みの発生・増強に関与している可能性が推測される。 [2]NCマウスは,通常環境下に飼育していると自然発症的に出血するほどの激しい掻痒行動を示す。このマウスにdexamethasone(1 mg/kg)を単回あるいは1日1回3日間投与では有意な抑制作用が認められなかった。Differential display法で,掻痒行動を示すNCマウスの大脳皮質にMEF2Cが発現することを見出した。また,antisenseの脳室内注射により,大脳皮質のMEF2C mRNAレベルが減少し,掻痒行動が抑制されることを明らかにした。
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