研究課題/領域番号 |
09275226
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
岡本 仁 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (40183769)
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研究分担者 |
三枝 理博 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20296552)
菊池 裕 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20286438)
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研究期間 (年度) |
1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1997年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
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キーワード | LIM / homeodomain蛋白 / Islet-3 / ゼブラフィッシュ / 小脳 / 中脳 / 神経分化 / dominant negative / homeodomain |
研究概要 |
LIM/homeodomain型転写転写因子群は、zinc finger様の金属配位部位を持つLIM領域とDNA結合領域のhomeodomainを持つ蛋白の総称である。我々は、LIM/homeodomain蛋白群のうちのIslet-1,Islet-2がその特異的発現パターンから、ゼブラフィッシュ胚の運動神経の特異化と密接に関わっていることを見出した。我々の成果も含め最近のデータは、この遺伝子群が、中枢神経系の部域特異性や、個々の神経細胞の特異性を決定する際に重要な役割を果たすことを強く示唆している。試験管内での機能解析の結果、LIM domainは、通常homedomainのターゲットDNAへの結合を阻害しているが、特定の共役因子がこの部位に結合することにより阻害が解除され、homeodomainのターゲットDNAへの結合が可能となる、というモデルが提唱されている。我々はこのモデルに従い、眼と視蓋に特異的に発現するIslet-3のLIM領域のみをゼブラフィッシュ胚で過剰発現させ、共役因子を吸収することによって内因性Islet-3の機能を抑制する実験を行った。このような胚では、本来Islet-3を特異的に発現する眼と、本来Islet-3を特異的に発現する視蓋に隣接する中脳・後脳境界部の小脳原基のみが欠損するという著しく特異的な異常が観察された。この結果から、中脳視蓋部は中脳・後脳境界部の小脳原基に対して分化を誘導する作用を持っており、Islet-3が眼の分化のみならず、この誘導作用の発現をも制御していることが強く示唆された。我々は更に、逆にIslet-3の活性が人為的に上昇された場合の、中脳及び小脳原基の発達を調べるために以下の実験を行った。まず、LIM領域によるhomeo domainのDNA結合能の阻害を解除するために、LIM領域の金属配位部の構造がアミノ酸置換によって破壊されるように、Islet-3のcDNAに変異を導入した。更に、この変異Islet-3蛋白(Islet-3^<m3>)の活性を任意に制御するために、Islet-3^<m3>のC末端にglucocorticoid受容体のステロイド結合部位を結合させた組換え蛋白(Islet-3^<m3>-GR)をコードする組換え遺伝子を作製した。内因性のIslet-3は、共役因子との結合によって活性化すると考えられるが、Islet-3^<m3>-GRはglucocoidとの結合によって活性化することが期待された。Islet-3^<m3>-GRをコードするmRNAをin vitro転写によって作製し、1細胞期のゼブラフィッシュ受精卵に注入した。受精後12時間後の飼育液にデキサメサゾンを加えることによって、Islet-3^<m3>-GRを活性化させた。このような処理を受けた胚では、中脳・後脳境界領域の前後幅が、正常胚と較べて50〜100%拡大した。この結果は、Islet-3が中脳及と中脳・後脳境界部の間の相互的誘導作用のレベルを調整している可能性を更に支持している。現在このような個体で、中脳及び中脳・小脳境界部の発生に関わる因子群(Pax2,FGF-8,Engrailed,Wntlなど)の発現の変化の詳細を解析中である。
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