研究概要 |
HSP60のcDNAクローニングが終了し、ヒトHSP60のcDNAを得た。得られたcDNAをもとにレコンビナントプロテインを発現させ、シャペロン活性を測定した結果、ミトコンドリア膜通過シグナル配列の有無にかかわらず、シャペロン活性を確認できた。我々が蛋白質レベルで提唱したように、シグナル配列を有したHSP60(細胞質タイプ)は、シグナル配列のないHSP60(ミトコンドリアタイプ)と同一機能を示し、生理機能を有したHSP60が細胞質にも存在することを分子レベルでも確認した。HSP60のミトコンドリア移行メカニズムに関して解析中である。 HSP70,HSP90に関しては、レコンビナント(ミュータント)、またはディリーションプロテインを作製し、各HSPに対するシャペロン活性阻害剤や促進剤等の解析と共に、各HSPのシャペロン活性発現部位等を解析している。 さらに、新種のATP結合蛋白質を見いだし、この蛋白質がシャペロン活性を有していることを報告した。この蛋白質のアミノ酸配列はデータバンクには登録されておらず、全く新しい蛋白質であり、分子レベルでの解析を目的に、現在cDNAクローニングを試みている。また、動物モデルを用いた実験では、HSP72/73,HSP60等の事前誘導が急性腎不全や、小腸障害を抑制または軽減させることや、ゲンタマイシン等の抗生剤による腎障害にこれらのHSPが深く関与することを報告した。
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