研究概要 |
分子シャペロン(DnaK,DnaJ,GrpE)はストレス条件下で作られたunfolded protein をfoldingする働き等があり、これらに関する知見は多い。他方分子シャペロンは通常の条件で複製開始因子や転写因子の活性化や不活性化を助け、広い生物種にわたり機能蛋白質の調整因子として重要な働きをしている。しかしこれらの作用機構の詳細は明らかでない。大腸菌ミニFの複製開始因子(RepE)の系はこのモデル系として優れている。RepEの単量体は複製開始因子として機能し、二量体はRepE遺伝子の自己転写抑制因子として機能することを明らかにした(Proc Natl Acad Sci.1994)。RepEは通常二量体として安定に存在し、複製開始因子としては不活性状態である。二量体から単量体への変換はDnaK,DnaJ,GrpE,ATPによって行われることを明らかにした(論文作成中)。1997年度の研究計画(1)でRepE-分子シャペロン複合体形成に関する成果は以下である。分子シャペロンの変異体を用いてRepE-分子シャペロン複合体形成をAffinity Columnを用いて調べた結果、RepEとDnaK,DnaJ,GrpEが各々直接相互作用することが分かった。今後、他の方法を用いて、このことを確認するとともに、複合体の解離過程を明らかにする実験を計画している。 一方でこの変換過程を分子レベルで理解するための基礎となるRepEの二量体形成ドメインを遺伝学、生化学的手法を用いて解析した結果、RepE(251 Residues)の中央領域が(93-161 Amino Acids)が二量体形成に必須であることが分かった(J.Mol.Biol.,1997,274,27-38)。 この系ではRepEの二量体、単量体がともに生理的機能を持ち、それらの変換に分子シャペロンが関与しているという特徴を持つ。この系での詳細な解析の成果は生物種にひろく保存されている分子シャペロンがストレス応答だけではなく、正常な増殖においても機能しているがこれらに共通する普遍的な法則性があることが予想され、それを見いだせるのではないかと考えている。
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