研究概要 |
[平成9年度研究成果] 目的:低分子量ストレス蛋白質であるアルファBクリスタリン(alpha B-crystallin;αBCL)は、中枢神経系では主としてアストログリア(astroglia;AST)で構成的に発現されている。多系統萎縮症・Alexander白質ジストロフィー症など特殊な病態では、異常燐酸化されたαBCLが細胞質封入体を形成し蓄積する。現在までヒトASTにおけるαBCL発現誘導・燐酸化の細胞生物学的意義は十分解明されていない。本研究では「ヒトASTにおいてαBCL燐酸化がストレス・細胞増殖因子・サイトカインによって調節され、これらの細胞内シグナル伝達因子として機能する」との仮説を考案し、その検証を目的とする。 方法・結果:ヒト胎児脳由来ASTはProf.Seung U.Kim,University of British Columbia,Canadaから分与承諾を得たが、供給待機状態なためヒトアストロサイトーマ細胞株U-373MGを用いて1D Western blot analysisで23kDaのαBCLの構成的発現を確認した。さらにαBCLのセリン燐酸化に関しては、特異抗体による免疫沈降法と抗フォスフォセリン特異的モノクロナール抗体によるnon-radioactive 2D Western blot analysisで検出できるか検討中である。これら一連の実験過程で、ヒト神経細胞・グリア細胞におけるプリオン蛋白質(prion protein;PrP)発現・PrP高次構造変換におけるストレス蛋白質の役割に関し、新知見を得たので報告した。すなわちヒト神経系細胞はサイトカイン受容体遺伝子を発現し、PrP遺伝子発現が細胞特異的にサイトカインによって制御されていること、PrP遺伝子欠損細胞においてもHSP25,HSP60,HSC70,HSP72,RSP105のheat-inducible and constitutive expressionは保持されることを見い出した。
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