研究概要 |
LIMホメオドメイン蛋白質Xlim-1の活性制御機構の解析を行うため、Xlim-1の標的遺伝子候補であるgsc遺伝子のプロモーターアッセイの系を用い、野生型Xlim-1とLdb1および他の転写困子との相互作用を検封した結果、オ-ガナイザー特異的ホメオドメイン蛋白質Otx2とLdb1がそれぞれXlim-1と共働的にgscプロモーターを活性化し、かつ3者の共存で活性はさらに増大することを見い出した。gscプロモーターの領域-492にはXlim-1の主要な結合部位が3つあり、そのうちの2つはアクチビン応答配列のDE,PEと一致し、他の1つはそれらの上流にある配列でUE(upstream element)と名付けた。UEあるいはDEに変異を導入したが、XLim-1,Ldb1,Otx2による活性化は部分的にしか減少しないことより、複数の結合部位がプロモーター活性に関与していると考えられる。一方、GscはXlim-1,Ldb1,Otx2によるgscプロモーターの活性化を抑制し、また腹側中胚葉に発現するホメオドメイン蛋白質PV.1(Vent1)もその活性化を抑制することを見い出した。GscとOtx2とはDNA結合配列は同じであることより競合的に働くと考えられる。以上の結果は、gscがオ-ガナイザー(背側中胚葉)に特異的に発現することをうまく説明できる。即ちオ-ガナイザーに発現するXlim-1,Ldb1,Otx2によりgscの発現が維持され、gscによる自己抑制はOtx2により競合され得る。一方、腹側中胚葉にはPV.1が発現しておりgscの発現が抑制される、と考えられる。このように転写因子間の胚発生における相互作用に関し興味深い知見を得ることができた。
|