研究課題/領域番号 |
09277214
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
原島 俊 大阪大学, 工学部, 教授 (70116086)
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研究分担者 |
向 由起夫 大阪大学, 工学部, 助手 (60252615)
金子 嘉信 大阪大学, 工学部, 助教授 (90161182)
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研究期間 (年度) |
1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1997年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
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キーワード | 酵母 / 転写制御 / クロマチン |
研究概要 |
7個のWDリピートを持つTup1タンパク(Sc-Tup1)は、Ssn6タンパクとともに種々のDNA結合タンパクに結合して転写開始領域に近づき、多様な遺伝子の転写を抑制する出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のcorepressorである。本研究は、Tup1による転写抑制機構の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。Schizosaccharomyces pombeのゲノムデーターベースに、Sc-Tup1のホモログ(Sp-Tup1と命名)が存在する事を見い出した。Sp-Tup1は、Sc-Tup1同様C-末端領域に7個のWDリピートを持つ。Sp-Tup1が機能的にもSc-Tup1のホモログであるか否かを検討するため、Sp-Tup1をクローン化し、S.cerevisiae tup1変異株を発現させたが、tup1変異の相補能は見られなかった。次にSp-TUP1破壊株を作成し、Sc-TUP1破壊株で知られている凝集性、接合能や胞子形成、グルコース抑制の欠損表現型を調べたが、それらの表現型は認められなかった。しかし、lexA::Sp-Tup1融合タンパクをS.cerevisiae細胞内で発現させたところ、lexA結合部位を持つレポータ遺伝子(lexA_<OP>-UAS_<CYC1>-lacZ)の発現を抑制した。これらの結果より、Sp-Tup1は転写抑制作用を持つと結論した。two hybrid法により、Sp-Tup1と相互作用する因子をスクリーニングしたところ、転写活性化因子GATAと相同性を示すgaf2^+、CREB familyに属するpcr1^+を同定した。この結果は、Sp-Tup1が、S.pombeにおいては転写活性化因子の作用を阻害することにより転写抑制作用を発揮する可能性を示唆している。Drosohpylaの転写抑制因子Grouchoは、C-末端領域に7個のWDリピートを持つ事、多様な遺伝子の転写抑制に関与する事から、Tup1ホモログである可能性が考えられる。これを検討するため、Groucho::lexA融合タンパクをS.cerevisiaeで発現させたところ、lexA_<OP>-UAS_<CYC1>-lacZレポーター遺伝子の発現が抑制された。Tup1の転写抑制メカニズムとして、ヌクレオソーム構造の安定化、基本転写因子の作用阻害が提案されている。本研究においてSp-Tup1と転写活性化因子gaf2^+やpcr1^+の相互作用が明らかになったことから、生物種によっては、Tup1による転写抑制作用の標的が転写活性化因子である可能性が示唆された。lexA::Sp-Tup1がS.cerevisiaeにおいて転写抑制作用を示すにもかかわらず、Sp-Tup1はS.cerevisiae tup1変異を相補しない。この事実は、S.cerevisiae細胞内において、Sp-Tup1とDNA結合タンパクあるいはSsn6との相互作用が起こっていない可能性を示唆している。もしこのことが正しければ、この系は、Sc-Tup1とSp-Tup1のキメラタンパクによるtup1変異の相補能の検定により、Tup1による多様なDNA結合タンパクやSsn6の認識メカニズムを明らかにするための有用な解析系となろう。
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