ヒトSWI蛋白質の1つのサブユニット(SWI2)のカルボキシル末端の約30kdの蛋白質断片を大腸菌を用いて大量発生させ、精製した。10mgの蛋白質断片を用いて抗体を作成した。western法を用い、HeLa細胞抽出液をアッセイしたところ200kdのバンドが検出された。これはSWI2全長の大きさと一致した。そこで、western法をアッセイ系に用いてHeLa細胞抽出液からスモ-ルスケールでヒトSWI蛋白質の精製を行った。その結果、ヒトSWI蛋白質は12種類以上のサブユニットから成る蛋白質複合体であることが分かった。ゲル濾過による解析からこのヒトSWI蛋白質複合体は分子量2000kdの巨大複合体であることも分かった。 次に、ヒトSWI蛋白質複合体の酵素活性を調べてみた。in vitroクロマチンDNA再構成系を用いて、精製したヒトSWI蛋白質複合体がクロマチン構造がもたらす転写抑制効果を解除する機能を持つことが分かった。この結果は、in vivoを反映する結果であり、世界ではじめて検出されたものと思われる。しかし、精製したヒトSWI蛋白質の量が少ないため詳しい解析が進んでいない。現在、HeLa細胞及び牛肝臓の核抽出液を用いてヒトSWI蛋白質を大量に精製する計画を進めている。 また、ヒトSWI蛋白質複合体のクロマチン構造がもたらす転写抑制効果を解除する機能にはコファクターが必要であることが分かった。そこで、このコファクターの精製を行いcDNAをクローニングし、SWI蛋白質の転写活性化の機構を解明することを計画している。
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