研究概要 |
蛋白合成を止めるトキシンの中で,rRNAを切断してリボソームを失活させるコリシンE3は有名であるが,コリシンE5はこの様なリボトキシンとは異なり,大腸菌細胞内の特定のtRNAを切断する全く新しいヌクレアーゼであることを明らかにした.この酵素活性はコリシンE5のC末端ドメインE5C(115アミノ酸)にあり,ColE5プラスミドを持つ生産菌は,コリシン遺伝子の下流の免疫性遺伝子がインヒビターImmE5(82アミノ酸)を合成することにより自殺を免れる.E5Cはin vitroで大腸菌全tRNAのうち,アンチコドン1文字目にGの修飾塩基キューイン(Q)をもつTyr,His,Asn,Aspに対する合計5種のtRNA分子に特異的に働き,アンチコドン付近,おそらくQの3′側のホスホジエステル結合を,5′OHの形で切断する.また生育中の大腸菌に致死量のコリシンE5を作用させ,RNA画分を抽出して,各tRNAの3′末端側配列に相補的な合成DNAをプローブとしてノザン解析を行うと,やはり上記tRNAが特異的に切断されていた.しかしQ修飾を欠く変異株でもコリシンE5に対して感受性であり,またE5処理したその株から抽出したRNAでも上記tRNAが切断されていたので,基質認識にQ自身は必須でないと考えられ,tRNAに対するCRDの分子認識に特別の興味が持たれる.また基質となるtRNAのアンチコドン/ステムを模した合成RNAをも切断するので,かなり局所的なtRNAの構造を認識しているものと思われる.
|