研究概要 |
蛋白質合成過程で必要となるGTP水解反応にrRNA中の"GTPaseドメイン"と"毒素ドメイン"と呼ばれる二つの部位が関わることが示されているが、両部位のリボソーム粒子中の位置関係は知られていない。本研究は、両RNAドメインに結合するリボソーム蛋白質の解析から二つのRNA部位の相互関係を明確にすることを目的として進められ、以下のような成果が得られた。 1)毒素ドメインに結合する大腸菌リボソームタンパク質の同定 毒素ドメインを構成する135ヌクレオチドより成るRNA断片をプローブとして、結合するリボソーム蛋白質をゲルシフト法により検索した。その結果、L6蛋白質がこの短いRNA断片に特異的に結合することが判明した。またFootprint法による解析の結果、毒素ドメインの中で、ペプチド鎖伸長因子や毒素の標的部位になる"毒素ループ"部位とL6/L3との相互作用が示され、これらが毒素ドメインの高次構造形成に寄与することが示唆された。 2)GTPaseドメインに結合する大腸菌リボソーム蛋白質 GTPaseドメインにL7/L12/L10蛋白質複合体およびL11の結合を示すFootprint法等による解析結果が報告されているが、我々はGTPaseドメインの100ヌクレオチドより成るRNA断片を用いた独自のゲルシフト法によりこれらの結合を確証した。 3)リボソーム粒子中の毒素ドメインとGTPaseドメインとの位置的関係 リボソーム粒子中の各蛋白質の位置関係は化学的架橋実験や免疫電子顕微鏡により解析された多くの情報から推察することができる。本研究で同定された毒素ドメインに結合するL6蛋白質はGTPaseドメインに結合するL7/L12,L10,L11の各蛋白質と隣接関係にある。したがって。両RNAドメインはリボソーム中で互いに近傍に位置し、蛋白質を介して協調的に働くと推察された。
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