研究概要 |
1)大腸菌の低分子RNAの一つである10SaRNAは、アラニンをチヤージしてtRNA分子としてリボソームに取り込まれた後、mRNA分子としても働くというモデル(trans-translation model)が提出されている。これに対して我々は、10SaRNAは温度ストレスの解消に何らかの役割をもつ可能性を一貫して探ってきている。たとえば、大腸菌の10SaRNA遺伝子の欠失株から温度感受性のthyA (thymidylate synthase) 変異株を分離したが、これらの変異株はすべて10SaRNA遺伝子によって相補されることはなかった。しかし、thyAts12,thyAts85,thyAts144などの株は10SaRNA遺伝子存在下で自然に復帰変異を起こし、10SaRNA遺伝子に依存した温度耐性復帰変異株が分離できることが判明した。これまでの解析の結果、thyAts12の変異はP228Lであること、この10SaRNA依存性復帰変異株のthyAts12-13,thyAts12-20はP228Lの他にT216Aの変異があることがわかった。 2)大腸菌のtRNALeu6はnon-essentialなtRNAの一つである。tRNAの新しい機能を調べる目的で、大腸菌の生育にこのtRNAを必要とするts変異株を分離した。遺伝的解析の結果、分離したtRNALeu6要求性変異株は二種類に分類できることが明らかになった。グループ1と命名した10株はmiaA遺伝子に欠損があった。グループ2の6株はgidAと呼ばれているori領域の隣りの遺伝子に変異があった。この遺伝子は細胞分裂に関与しているが、tRNALeu6が細胞分裂に関わっていることを示す新しい事実として注目される。
|