研究概要 |
1.S1蛋白質A-Dは本研究者が発見したhnRNA結合性のタンパク質ファミリーである。今回S1蛋白質に対する抗体産生ハイブリドーマを作製したところ、本抗体はS1蛋白質のC2,D2と特異的に反応した。これを用いてC2and/or D2が細胞核のみならず細胞質にも存在し、後者では線維状構造に局在化することが判った。これを詳細に調べ、本線維構造がビメンチン中間径繊維であることを明らかにし報告した(Cell Struct.Funct.22,239-246,1997)。hnRNPタンパクの細胞骨格会合性に関する報告は世界的にこれが始めてである。 2.ビメンチン径繊維に会合するのはC2,D2のうち、C2であることを生化学的細胞生物学的に明らかにした。また、細胞が動いたり、細胞骨格構造を再編成する際にS1蛋白質はビメンチン上に現れることが判ってきた。現在の作業仮説は、mRNAにはビメンチンに向かう集団が存在し、S1はそのビメンチン繊維への輸送か、ビメンチン繊維上での翻訳制御に与かる、とするものである。細胞が骨格構造の再構成を必要としない状況下ではこれらのmRNAは不要で、S1蛋白質は細胞核に局在化すると思われる。 3.S1タンパク質のアミノ酸配列を決定した所、C1はB型肝炎ウイルス・エンハンサーの転写活性化因子であるE2BPに、D2はα-アクチン遺伝子プロモーターのCArGボックスに対する転写抑制因子CBF-Aに一致した。S1蛋白質はしたがって、hnRNA結合蛋白質であると同時に転写因子でもあり、転写と転写後の両反応に関わる二元性機能を持つ珍しい蛋白質であることが明らかとなった(J.Biol.Chem.に投稿中)。他のS1蛋白質については現在さらに解析中である。
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