研究概要 |
平成9年度は計画に従って研究が実施されたが,新しい発見により項目2,3,4より5に重点を置いた研究を行った. 1.SSEC-D全長cDNAの単離.ほぼ全長のcDNAをマウス胚性幹細胞のcDNAライブラリーより単離した.125アミノ酸をコードする領域は予測できるが,ペプチドのモチーフは見いだされず機能は未知である. 2.抗体の作成と抗体を用いたタンパク質発現解析.本年度は抗体作成の為に種々のcDNA断片を結合し,大腸菌で目的のタンパク質を発現する系を確立した. 3.3'-UTR領域に結合するタンパク質の単離.酵母のtwo-hybrid systemの基礎固めを行った. 4.RNA注入による発現解析.in vitroで合成した大腸菌βgal遺伝子との融合RNAを受精前後のマウス卵に注入を行った結果,接続するSSEC-D RNAの部分により,βgalの活性に違いがあるようであったが,この実験系は定量性,RNAの安定性等に問題があることに気づいた. 5.SSEC-D RNAの受精に伴う変化(1)SSEC-D RNAは受精後15時間前後に一過性に伸長するが,このSSEC-D maternal RNAは2細胞期後期頃から再び短縮,分解することが判明した.これは検出感度の改良を行った結果,30個程度の受精卵の全RNAを用いてNorthern Blottingが実施できるようになったことによる.(2)この伸長は3'末端へのA-richな配列の付加によることを証明し,(3)この伸長,短縮,分解の過程が,受精後に起こる新たなDNA複製やmRNA合成を必要としない自律的な変化であることを明かにした.このSSEC-D RNAの動態は,マウス受精卵における母性RNAから接合子型RNAへの転換に深く関わる一般的な現象と見ており,今後この自律的プログラムを分子レベルで明かにすることが重要である.
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