研究概要 |
ncdはアミノ酸700個からなるキネシン様タンパク質である。C端領域モータードメインがあり、neck、tailと伸びている。キネシンは、逆にN端領域にモータードメインがある。いずれもATPを加水分解して微小管上を運動する。X線結晶構造解析から得られた、キネシンとncdのモータードメインの立体構造は非常によく似ているが、微小管上でキネシンはプラス端に、ncdはマイナス端に向かって移動する。モータードメインに続く領域は、7残基繰り返しに富み、一番目と4番目の位置に疎水性アミノ酸が存在するcoiled coilの配列に特徴的な性質が見られる。したがって、ncdのneck領域は二量体のcoiled coilを形成し、何らかの形態変化を起こすことで、運動性を決める可能性が示唆される。 本研究では、295-332領域周辺でcoiled coilである確率が高いneck,stalkの部分配列を持つ17-66までの30種類の様々な長さのペプチドを合成して、円二色性スペクトル(CD)を測定した。CDの値からヘリックス含量を求めて、ペプチドの構造と性質を解析した。その結果、CDを測定した比較的低濃度の条件(20℃、pH7.0、0.4mM程度)ではcoiled coilを形成しているペプチドは見いだせなかったが、lmMという高濃度でND01(296-352)がcoiled coilを形成した。また、電子顕微鏡測定条件と同じ5mM K-phosphate(pH7.0)でND24(295-340)にヘリックス性の向上が見られた。このことから、ncdのneckおよびtail領域のペプチドの性質としては、coiled coilを形成する能力は備えているが、ヘリックス性が低くcoiled coilも形成しにくい、と考えられる。したがって、motor,tailもしくは全長が二量化には必要ではないかと考えられる。生理的条件では、微小管近傍で局所的にncd濃度が高くなるので、分子どうしが相互作用して、neck領域がcoiled coilを形成し、二量化すると考えられる。
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