研究概要 |
Lewy小体(LB)はパーキンソン病(PD)、Lewy小体型痴呆(DLB)の特徴病変である.ごく最近常染色体性優性遺伝を示す家族性PD家系においてα-synuclein遺伝子の変異が同定され、α-synucleinとPDの関係が注目されている。そこでLBとα-synucleinの関係について検討した。DLB脳から精製したLBを抗原として、LBと特異的に反応するモノクローナル抗体(mAb)を作製した。またα-synuclein及び相同性を示すβ-synucleinに対する抗体を作製し、弧発性PD,DLB脳を染色すると共に精製LBを抗α-synuclein抗体によりイムノブロットし、LB中のα-synucleinの存在様式を調べた。LBを抗原とするmAbとしてLB509が得られ、PD,DLB脳標本上の全ての脳幹、皮質型LBが強く染色され、イムノブロットでは正常脳可溶画分中の約18kDの単一のバンドと反応した。LB509は精製α-synucleinとイムノブロットで特異的に反応すること、β-synucleinとは反応しないことを確認した。抗α-synuclein特異抗体259及びα,β-synucleinを共に認識する抗体77はLB509と同様にLBを染色したが、抗β-synuclein特異抗体253はLBを染色しなかった。精製LBをLB509,259でイムノブロットすると、全長α-synucleinに対応する18kDのバンドに加えて14-16kD、30-35kDのバンドと高分子量域にスメア状の反応が見られた。これらの結果はα-synucleinが弧発性PD,DLB脳のLBに蓄積していることを示すものであり、弧発性PD,DLBにおける神経細胞変性とLBの形成に、家族性PDに見られるA53T変異に類似したα-synucleinの変化が関与している可能性がある。
|