研究概要 |
血管内皮組織の細胞外マトリックス成分ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)は、近年、単なる細胞間充填物質というより細胞間の新しい情報伝達物質として様々な血管機能に関与していることが判明しつつある。我々はヒト血管内皮細胞からHSPG(Ryudocan)を精製し、リガンド分子の検索ならびに正常血管、血栓形成部、動脈硬化巣などにおける組織免疫学的な本分子の発現分布状況の検索と合わせ、血管損傷時の血栓形成、血管新生、組織修復に起因する動脈硬化の発症に関わるRyudocan分子の機能について検討した。さらに、ヒトRyudocanゲノム遺伝子の単離・構造解析も行なった。スクリーニングの結果、精製ヒトRyudocan分子はbFGF、midkine(MK)およびTissue Factor Pathway Inhibitor(TFPI)に強い親和性(それぞれKd=0.5,0.3,0.74nM)をもつことが判明した。また、免疫組織学的解析では、動脈硬化巣、抹梢神経線維束、胎盤絨毛上皮細胞や、胎児の肺微小血管、心内膜にも明らかな発現が見られ、RyudocanがbFGFを介して細胞増殖や動脈硬化あるいは血管新生、MKを介して抹梢神経系のネットワーク形成、さらにはTFPIを介して抗血栓性に深く関与する多機能分子であることが示唆された。一方、全長約23kbのヒトRyudocan遺伝子遺伝子解析では、5'-flanking領域の検索では転写開始点の25bp上流にTATA-box様配列の他、様々な転写因子の結合配列の存在が判明した。Luciferase assayによる発現解析から5'-flanking領域のうちEcoRI〜Sma I間にbasicプロモーター、Sac I〜EcoRI 間にエンハンサー、Sau3AI〜SacI間にサイレンサーエレメントがそれぞれ存在することが推測された。
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