研究概要 |
動脈硬化は血管内皮の傷害、血管壁内への血液細胞や血漿成分の侵入、動脈硬化巣での炎症性メディエーターやサイトカインの産生、平滑筋細胞の増殖等の過程を経て発症・進展することが知られている。この各段階においてアラキドン酸の代謝産物であるプロスタノイドが重要な役割を果たすとが考えられている。一方、プロスタノイドはその種類が多く、多種類の受容体が同一細胞に発現していたりその作用が相反するなど、どのプロスタノイドがどの受容体に作用してその効果を発揮するかについては多くの不明な点が多く残されている。本研究は、既に作製した8種類のプロスタノイド受容体欠損マウスを用いて、各々のプロスタノイドが動脈硬化の発症・進展において果たす役割とその分子機構を解明することを目的としている。 まず、各プロスタノイド受容体欠損マウスにおいて、動脈硬化の発症と関連する因子として血圧、腎機能、血中リポ蛋白分画等を解析した。しかし、現時点で解析を行ったTP,IP,DP受容体欠損マウスにおいてはこれらの因子に異常を認めなかった。一方、血管内皮障害モデルを用いて内皮障害に起因する血栓形成を解析し、IP受容体欠損マウスにおける著明な血栓形成を証明した。この結果、動脈硬化発症の初期に関与すると考えられる内皮障害血管での血栓形成の防御因子としてPGIが重要であることを明らかにした。また、高コレステロール食負荷による動脈硬化をプロスタノイド受容体欠損マウスを用いて解析するための戻し交配を進め、現在5代以上の交配が終了して負荷の準備を整えた。
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