研究概要 |
動脈硬化性病変の発生に、セレクチンと糖鎖を介する細胞接着が関与することが示唆されている。血管内皮細胞上の細胞接着分子E-、およびP-セレクチンは、対応するリガンド糖鎖が白血球に発現されている。この両者を介した細胞接着により、血管障害性病変が進行することについては、これまで動物実験などでよく検討されている。しかし、L-セレクチンの場合には、白血球にL-セレクチンが発現され、血管内皮細胞上にセレクチンのリガンド糖鎖が発現されるとされているにもかかわらず、血管内皮上のリガンド糖鎖の本体については、これまでほとんど不明であった。従来シアリルルイスx糖鎖がセレクチンのリガンドであるとされてきたが、特異的な抗シアリルルイスx抗体を用いても、血管内皮上には、シアリルルイスx糖鎖が検出されにくかったからである。そのため、血管内皮上のL-セレクチンのリガンド糖鎖の本体の同定、およびその発現の制御機構の検討を行った。その結果、リンパ節の高血管内皮細胞(HEV)に発現されているL-セレクチンリガンド糖鎖は、通常のシアリルルイスxではなくて、6-スルホシアリルルイスxであることが明らかになった。この糖鎖は、HEV血管内皮細胞に特異的に発現され、リコンビナントL-セレクチンとの結合能を有し、HEVに対するリコンビナントヒトL-セレクチンの結合をほぼ完全に阻止した。また、ヒト培養血管内皮細胞でのフコシルトランスフェラーゼのアイソザイムのメッセージの発現の検討の結果、フコシルトランスフェラーゼFT3,4,5,6,7のうち、FT7のmRNA含量が最も多く、ついでFT4が多いことが判明した。IL-1刺激により、FT7のmRNA含量は有意に増加した。
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