研究概要 |
3年度にわたる科学研究費補助金によって,以下のような成果が得られた. ・磁場中X線構造解析装置を立ち上げることができた. ・TMTSF系と類似の系で我々のグループが発見したDMET-TSeF系で新しい研究結果が得られ,強磁場物性について,国際的な共同研究の成果が出た. ・TMTSF系の磁場誘起スピン密度波状態についての理論的研究が進展した. 作製した装置は極低温,強磁場中でX線測定を行うという意欲的なものなので,様々な実験上の問題点が出てきたが,当初目標とした測定磁場7Tを発生し,測定することが可能となった.本研究に関連したX線の測定技術についての成果は日本結晶学会誌に出版している. 研究面では,国際的な協力により,強磁場の物性研究に新しい進展があったことがあげられる.研究に力をいれたDMET-TSeF系はFISDW状態を研究するうえでTMTSF系に匹敵する重要な系であることがわかった.この研究でわかったDMET-TSeF系のFISDWが動きやすいということの理由はこれからの新しい問題である.さらに最近,我々は(DMET-TSeF)_2AuI_2の強磁場ホール効果の測定に成功した.(DMET-TSeF)_2AuCl_2の場合とは異なり,(TMTSF)_2PF_6で観測されている量子ホール効果と非常に類似した振る舞いを示し,ホール電場の符号も反転する.ホール電圧そのものの大きさは小さく,スライディングの効果を考慮する必要があると思われるが,これまでのFISDWで報告されている効果とは異なる現れ方をしている. 理論面の研究ではアニオンの超格子構造をもとにした,標準理論を拡張した理論的取扱いが進展した.
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