研究概要 |
1.ビシクロ骨格の縮環したデヒドロアヌレン類 ビシクロ[2.2.2]オクテン(以後BCOと略記)の縮環した一連のデヒドロ-[12]-,-[16]-,-[18]-,-[24]-,-[30]-アヌレンを合成し、その酸化還元挙動について電気化学的手法により明らかにした。特に[16]アヌレンは銀イオンを空孔部に取り込み安定な錯体をつくることを見出し、その構造をX線結晶解析により明らかにした。 2.BCOユニットの縮環したベンゼン系芳香族炭化水素 完全にBCOユニットの縮環したベンゼン、ナフタレン、ビフェニレン、およびアントラセンを合成し、一電子酸化により安定なラジカルカチオン塩を単離することに成功した。ベンゼン以外についてはさらに酸化して、ジカチオンとしてNMRによりこれを観測することにも成功した。 3.BCOユニットの縮環したシラシクロヘプタトリエンとシラトロピリウムイオン BCOが縮環し、種々の置換基をケイ素原子上にもつシラシクロヘプタトリエン誘導体を合成し、その電子的性質を明らかにした。特にメシチル基をもつ誘導体からは、低温溶液中において、π共役したケイ素カチオンであるシラトロピリウムイオンを発生することに初めて成功した。 4.BCOユニットの縮環した含硫黄環状π共役系 2個のBCOユニットの縮環した1,2-および1,4-ジチインとチオフェンを合成し、安定なラジカルカチオン塩に変換・単離することに成功した。ジチイン類はさらに芳香族性をもつジカチオンへと変換した。また3,4-位にBCOの縮環したチオフェンを合成し、電気化学的な酸化重合によりポリチオフェンへの変換に成功した。
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