研究分担者 |
谷下 一夫 慶応義塾大学, 理工学部, 教授 (10101776)
稲葉 英男 岡山大学, 工学部, 教授 (40133805)
林 勇二郎 金沢大学, 工学部, 教授 (30019765)
西尾 茂文 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00111568)
村勢 則郎 東京電機大学, 理工学部, 教授 (40120125)
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研究概要 |
本研究では,8つの分担課題を2年度にわたって研究した.ここではその成果の概要をそれぞれの課題について述べる.1.生体の凍結・解凍における輸送現象論と損傷機序の解明(林,多田)では,小麦プロトプラストを用いた凍結・解凍実験とin vivoな浸透圧実験及び生体組織におけるミクロ輸送現象のシミュレーションを行い,マクロな伝熱現象と細胞の生存との関連を明らかにした.2.含水多孔性食品の過冷却の能動的制御による凍結保存の熱工学的検討(稲葉)では,含水性食品の凍結において重要な因子である過冷却について,各種の無機・有機水溶液による実験を行い,水溶液の体積と限界過冷却度の関係その他を明らかにした.3.熱物性値による凍結過程のマクロ的評価とミクロ的構造の対応(谷下)では,神経系クローン細胞であるPC12細胞をマイクロカプセル化したものについて凍結実験を行い,色素排除試験・ドーパミン放出量測定・示差熱分析などにより生存率と氷晶生成の関係を明らかにし,マイクロカプセルの有効性を立証した.4.高分子ゲル中における氷晶形成とガラス化(村勢)では,架橋高分子ゲルを用いた示差走査熱量測定により,冷却時の水のガラス化を観測し,またSEMによるゲルビーズ構造の観察を行った.5.細胞膜透過係数の測定と凍結前処理プロセスの設計(西尾,白樫)では,ガラス化による凍結保存を目指した細胞内への凍結防御剤の浸透プロセスについて,人の内皮細胞を用いた実験を行い,膜透過係数を測定するとともに凍結前処理プロセスについての提案を行った.6.組織細胞の凍結過程における熱・物質移動の微視的観察研究(鶴田)では,タマネギの表皮細胞を用いた方向性凝固の顕微鏡観察を行い,水の膜透過率と細胞の脱水収縮の関係を明らかにし,また細胞内凍結における凍結温度と凍害防御剤濃度との関係を求めた.7.マクロ凍結条件に対する生体細胞懸濁液の凍結過程における氷結晶と細胞のミクロ挙動特性(石黒)では,冷却速度や温度勾配伝播速度が細胞懸濁液の凍結過程での氷結晶の形態や細胞との相互作用などに及ぼす影響を明らかにし,また凍結過程の3次元ミクロ構造の実時間計測を行った.8.総括,生体組織の凍結保存の研究(棚澤)では,これまでの国内外の研究結果の検討から,生体組織の凍結保存の成否を支配する諸因子を整理して体系化を行い,今後さらに研究が必要になる課題を明確化した.
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