研究概要 |
本研究は,平成9・10年度の2年間にわたって,被服管理領域指導のための教材開発を目的とした基礎的・応用的研究を行い,最終年度に当たる平成10年度に,報告書を作成した。得られた成果の概要は,次のとおりである。 教材開発のための基礎的研究:(1)田川は,浸透ぬれ評価のために,繊維集合体中での液体の浸透速度と接触角を測定し,集合体構造,繊維表面や液体の性質とぬれの関係を検討した。(2)宮本は,改良ストップトフロー装置の有用性を確認した後,汚れモデルとしての種々粒径のポリスチレンラテックスへの界面活性剤の吸着動力学の教材化を検討した。(3)後藤は,シラン化処理シリカ板と球形ポリマー粒子から成るモデル洗浄系を構築し,付着現象を物体間相互作用の立場から検討する方法で,モデル系の妥当性を検証した。(4)藤井は,炭化水素のような非極性油汚れは,陰イオン界面活性剤/co-surfactant/塩水の系で自然乳化あるいはマイクロエマルションによって高度に除去されることを確認し,さらにビデオカメラによる映像化を検討した。(5)多賀谷は,洗剤の適正使用教育支援のための教材として,各種繊維基質にモデル油性汚れを点着して洗剤水溶液で展開するカラムクロマトグラフィーによる汚れの洗浄機構を解明する方法を開発した。(6)岡田は,各種家庭用全自動洗濯機の洗浄性能を調べ,洗濯機の洗浄性はコースすなわち機械力に依存して浴比の影響は小さいこと,洗濯槽中での被洗物の位置によって洗いむらが大きいことを見出した。 教材開発に関する実践的研究:(1)杉原は,身近な材料を用いて表面反射率計を試作して,教材としての有用性について検討した結果,洗濯教材として十分使用可能なことを確認した。(2)所・山下は,各種界面活性剤(陰イオン,陽イオン,非イオン)濃度を決定するための簡易測定装置を開発し,良好な結果を得た。(3)日景は,りんごやさくらを用いて綿布の染色を検討した。染色性向上については布の濃染剤処理により,染材料の安定供給については,さくらの葉の冷凍保存やりんごの皮の乾燥により解決できることを見出した。(4)小川は,被服管理領域に関する実験教材の情報を収集してデータベース化し,ビジュアル化した実験情報とともに,インターネット公開した。(5)大矢は,商品テストや合成洗剤問題を扱うHTTP学習システムが,被服管理領域の消費者教育に有効であることを明らかにした。
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