研究概要 |
本研究は,高速・広範囲に高純度ダイヤモンドおよびダイヤモンドライクカーボン膜を合成する装置を試作し,その工業的実用化を目指すことを目的としたものである.試作装置は,プラズマソース,電力供給系,ガス供給系,真空排気系,冷却水供給系および真空容器からなる.直径約500mmの真空容器には,原料の炭素を励起するためのプラズマソース取り付けポートのほか,炭素を気化するためのレーザ光導入窓およびイオンビーム導入口を設置した.ダイヤモンドやダイヤモンドライクカーボン膜は,レーザアブレーションやイオンビームスパッタリングにより固体ターゲットから気化された炭素を,プラズマソースから供給される最高80Aの電子を含むプラズマジェットによりさらに励起し,基板上で形成される. アルゴンイオンビームによりグラファイトターゲットをスパッタし,プラズマソースの出力,基板位置,バイアス電圧などを変化させ,炭素膜の合成を試みた.得られた膜の特性は,ラマン分光分析,赤外分光分析,摩擦摩耗試験により評価した.ラマン分光分析より,プラズマソースの出力を増し,基板をプラズマソースに近づけるにしたがって,従来の方法で得られるダイヤモンドカーボン膜とは異なる構造の膜が得られることがわかった.また,この膜は波長2-25μmの赤外光領域には特別な吸収帯をもたず,鋼球との摩擦係数は大気中で0.05と非常に潤滑特性がよいことがわかった.
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