研究概要 |
原子核の単一粒子的な空孔状態のうち、その高励起状態である深部空孔状態がどのように崩壊するかについてはこれまでほとんど測定されておらず、カスケード的に多粒子空孔状態を経由して統計的に崩壊するのか、親核の構造を強く反映してもっと直接的に崩壊するのかについては実験的な検証は皆無に近い。また、s-hole状態の粒子崩壊はハイパー核の崩壊様式との関連で興味が持たれており、^<15>N(s-hole)の粒子及びγ崩壊は水チェレンコフ装置を用いた核子崩壊の測定とも関連している。 我々は先ず、薄い^<16>O標的(約2mg/cm^2のSiO_2(石英ガラス)と同厚のSiとの組合せ)やペルチェ素子によるSSD冷却システム等を開発した後、s-hole状態からの荷電粒子崩壊の実験を大阪大学核物理研究センター(RCNP)の中間エネルギー(400MeV)陽子ビームを用いて行った。(中性子崩壊及びγ崩壊についても実験プローポーザルが最近採択されて実験準備が進められている。)陽子ノックアウト反応(^<12>C(p,2p)^<11>B,^<16>O(p,2p)^<15>N)による放出2陽子をダブルアーム・スペクトロメータで測定し、更に散乱槽回りに設置された崩壊粒子測定用の△E-E SSDボールテレスコープによって残留核の深部空孔状態からの崩壊放出荷電粒子(p,d,t,α)の同時測定を行った。 ^<11>B,^<15>Nの粒子崩壊では、単純な統計則によれば大きなQ値を持つα粒子崩壊がよく起こると考えられるが、実験では^<11>B(s-hole),^<15>N(s-hole)ともにα粒子崩壊はその大きなQ値にもかかわらず抑制されていることが観測された。これはdoorway s-hole状態からの粒子崩壊における選択則を初めて検証したことになる。更に、s-hole状態が単純な一山ではなくいくつかのバンプ構造を持ち各構造において崩壊粒子毎の分岐比が異なることも見出され、現在それを説明するためのモデル計算が活発に進められている。
|