研究概要 |
2本鎖梯子型量子スピン系のSrCu_2O_3について非磁性不純物(La-4%,5%,Zn-1%,3%)、磁性不純物(Ni,l%,2%,3%)を添加した系、ホールがドープされたSr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41-y>系についてのCu-NQR、NMR測定を行い、梯子格子系の量子コヒーレンスの効果によって特異な磁気秩序が発現することを明らかにした。 平成9年度の成果 1. SrCu_2O_3にZnおよびNiを添加した系では、共通に反強磁性磁気秩序が起こることを示し、磁気モーメントの大きさは不純物近傍で空間的な分布をもつが、丁度不純物間の中間領域では0.041μB程度の比較的に均一な反強磁性自発分極をもつことを明らかにした。 2. Zn添加系で反強磁性磁気秩序が起こる臨界濃度は0.5%付近であることを緩和時間の測定から明らかにした。 3. L.aを添加した系(電子ドープ系)では、磁場による反強磁性分極が誘起されるが最大5%まで磁気秩序は起こらないことが明らにした。これはLaがSr位直に置換され、ラダー面のCu位置に均一に電子がドープされることに起因していることを示唆した。 4. ホールがドープされたSr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>系では、すでに存在するホール濃度が少ない試料では空間的に均一な反強磁性分極が磁場によって誘起されることを見出した。 平成10年度の成果 1. 不純物(Zn,Ni,La,)によって誘起された異常磁性 不純物によって誘起される交番磁化分極の相関長ξ_Sが不純物の種類に依らず、不純間距離とともに増大することを示した。また不純物を添加しない系のスピン一重項液体状態の相関長より極めて長いことが明かとなった。 2. ホールドープ系スピンラダーの常圧での磁気秩序の同定 加圧によって超伝導が発現するSr_<2.5>Ca_<11.5>Cu^<24>O_<41>は常圧下でT_N=2.2Kで磁気秩序を示すが、NMR/NQRの研究からラダー面上で0.02μ_Bの比較的に一様な大きさの自発磁気モーメントを持ち、鎖面上で最大0.5μ_Bの分布した磁気モーメントをもつ磁気秩序状態にあることを示した。 梯子スピン系に不純物が添加されると低エネルギー励起(スピノン)が誘起され、その励起を媒介にして磁気秩序が発生する。一方、ホールをドープした系では多様な電子相が現れる。遍歴する場合は、超伝導が出現し、局在する場合は電荷密度状態と磁気秩序が共存する。電荷およびスピン自由度の局在と遍歴に起因して多彩な電子相があらわれることが本研究によってか明らかとなり、低次元量子スピン系の新しい研究分野の方向を切り開くことができた。
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