研究概要 |
本研究では,(1)GPSを定期航路船に搭載し実際に海面高度場を計測すること,(2)既存のADCP資料とTOPEX/POSEIDON高度計資料を解析し対象海域の中規模渦の実態を把握すること,(3)既存の海洋資料から対象海域の水塊構造とその変動を把握すること3つの項目について行った. (1)GPS干渉測位に基づく海面高度計測の実験 1999年9月,東京と小笠原を結ぶ定期航路船「おがさわら丸」を利用し,GPS連続キネマティック観測を1往復分行った.基線長(2つのGPS観測点の距離)が短い範囲内では有効なデータが得られたが,基線長が長くなると,停泊中・航行中いずれの場合も定量的な解析に耐えうるデータは得られなかった.二見港停泊時のデータから潮位変化を十分な精度で抽出することができた. (2)TOLEX-ADCPとTOPEX/POSEIDON高度計資料を用いた黒潮再循環系における中規模渦の解析 既存のTOLEX-ADCPとTOPEX/POSEIDON高度計資料を用いて,日本南岸黒潮再循環域における中規模渦の実態を調べた.多くの高気圧性・低気圧性の中規模渦が見出された.渦の直径は約500kmで約80日の時間スケールを持つ.これらの渦は黒潮続流域で形成されていると示唆される. (3)既存海洋資料よる亜熱帯循環系北西部における亜熱帯モード水経年変動の研究 水温資料を時間・空間的に格子化して,亜熱帯モード水の経年変動を,冬季東アジアモンスーンの強弱との関係に着目して合成図解析手法により調べた.強い(弱い)モンスーンの冬季は,冷たく(温かく)厚い(薄い)亜熱帯モード水が形成されていることなどが分かった.
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