研究概要 |
1. Berry Pseudorotation機構における不安定中間体の合成と分子内位置異性化 Martin ligandを2つ用いてスピロ形P-H(エクアトリアル)ホスホラン1を合成した。 1に対して2当量のRLi(R=メチル、n-ブチル、t-ブチル、ベンジル、2,4,6-トリイソプロピルフェニル)を反応させると、R基が導入されたジアニオンを経由して、R基が導入された単環式のP-H(アピカル)ホスホラン2が高収率で得られた。2をピリジン共存下に加熱すると、脱水素反応により、アピコフィリシテイに反するスピロ形P-R(エクアトリアル)O-シスホスホラン3が主生成物として得られ、より安定なスピロ形P-R(エクアトリアル)O-トランスホスホラン4が副生成物として得られた。一方、上記のジアニオンを反応系中でヨウ素で酸化すると、3が高収率で得られた。3の反転(enantiomerization)及び3から4への位置異性化の速度論的研究を行い、それらの活性化エネルギーを求めた。 2. 5配位ホスホランを用いるZ-選択的Wittig反応の開発とその機構 1とブロモ酢酸エチルを塩基共存下で反応させ、エステル基をもつホスホラン5を合成した。5を脱プロトン化後、種々のアルデヒドと反応させたところ、Z-オレフィン6が高収率(>98%)で得られた。6はエステル基をもつため、極めて珍しく有用な反応である。5の類縁体であるβ-ヒドロキシ-α,β-ジフェニルエチルホスホラン7の4種の立体異性体を低温で脱プロトン化し、対応する6配位ホスファート8を観測し、その立体構造と反応速度の関係を明らかにした。
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