研究概要 |
2,6-ナフトジオールが1,5位で結合した多軸不斉の化合物を合成した。3量体に相当するTERNOLは、2,4-ペンタンジオール架橋反応により(R,R)体および(S,S)体の不斉合成に成功した。また、ラセミ混合の分割によっても合成した。この際、分割剤であるスルフォン酸エステルの新しい脱離法を開発し利用した。4両体であるQUANOLは光学活性BINOL(2量体に相当)を原料として(R,S,R)体、(R,R,R)体(S,R,S)体、(S,S,S)体、の4つの立体異性体をそれぞれ光学的に純粋に合成した。これらのリガンドは予想通り,多くの有機溶媒性が低く、不均一系リガンドとして利用可能なことが分かった。現在までにいくつかのルイス酸触媒を調製し、反応を試みたが触媒活性自体が低く、現在までに実用性の高い反応を行うに至っていない。一方、これらのリガンドのもう一つの特長である酸化還元性は種々の新しい可能性を示している。今後、反応中の異性化の問題が解決できれば有効な新規リガンドとして期待できる。 以上、この研究を通して新規不斉反応の開発、新規光学分割手法の開発、軸不斉円ニ色性の加算性、軸異性化条件の解明などの成果を挙げることができた。触媒リガンドとしての性能の改善は置換基の導入やさらなる反応の検索により達成できると考えられる。
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