研究概要 |
共役多核錯体系において、その構造や核間電子的相互作用の強さと物性との相関性を調べることは、新しい機能物質を設計するうえで重要である。本研究では、フェロセン、コバルトジチオレン錯体、テルピリジン錯体などを組み合わせた新化合物を合成し、幾何構造-物性相関性を研究した。 新規合成したアゾ架橋フェロセン三核錯体FC-FC'-N_2-FcとFc-N_2-Fc'-N_2-Fc(Fc=ferrocenyl,Fc′=1、l′-ferrocenylene)について、レドックス特性と混合原子価状態における光学吸収、ITバンドの触析から、混合原子価状態の構造はそれぞれ、Fc^+-N_2-Fc-N_2-FC,Fc^+-N_2-Fc-N_2-Fc^+,およびFc^+-Fc-N_2-FC,Fc^+-Fc-N_2-Fc^+であることを明らかにした。また種々の溶媒系で物性を測定し、Marcus-Hush理論に基づく解析を行なった結果、溶媒が核間相互作用に及ぼす影響は溶媒の誘電率に加えて、ドナー・アクセプター性を考慮することが重要であることを示した。 新規合成した2核錯体、o,m,p-ビス(フェロセニルエチニル)ベンゼン、6核錯体、ヘキサキス(フェロセニルエチニル)ベンゼンのレドックス特性、化学的酸化時の光学吸収の変化から、パラ位の相互作用が重要であることなどを明らかにした。 ベンゼンジチオラトコバルト錯体とM(CO)_6(M=Mo,W)との反応で、4つのμ-s配位子とCo-M-Coをもつクラスター錯体を合成した。この錯体のX線結晶構造解析を行うとともに、金属核間相互作用に基づくレドックス挙動と各酸化状態の光学特性、磁気特性を明らかにした。 2つのテルピリジンをアゾ基で架橋した新しい多座配位子、tpy-AB-tpyを合成し、それを用いて、Rh,Ru,Co複核錯体を合成し、配位子および複核錯体の光異性化反応およびレドックス特性を明らかにした。
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