研究概要 |
Haloarcula japonicaは三角形平板状の形態を有する高度好塩性古細菌である.本研究では,H.japonicaに由来するフェレドキシン(Fd)の構造と機能ならびに耐塩性に関する知見を得ることを目的として,H.japonica Fdの精製と性質検討,さらには遺伝子クローニングと大腸菌での発現を行った. 菌体抽出物から,脱塩・陰イオン交換クロマトグラフィー・ゲルろ過の操作により,H.japonica Fdを精製した.H.japonica FdのN末端30アミノ酸の配列を決定した.また,電子スペクトルおよびESRスペクトル解析より,H.japonica Fdは2鉄型クラスターを持つことがわかった. H.japonica FdのN末端アミノ酸配列ならびに類縁菌Fdのアミノ酸配列相同性に基づくプライマーを用い,H.japonica染色体DNAを鋳型とするPCRを行い,H.japonica Fd遺伝子の一部を増幅した.そして,このPCR産物をプローブとするコロニーハイブリダイゼーションにより,H.japonica部分染色体ライブラリーの中からFd遺伝子をクローニングした。H.japonica Fd 遺伝子は387ntのオープンリーディングフレームからなり,129アミノ酸をコードしていた.また,H.japonica Fdは類縁菌Fdとアミノ酸レベルで87%〜98%の高い相同性を有していたものの,植物型Fdの代表であるほうれん草Fdとは43%の相同性しか示さなかった.H.japonica Fdは,他の高度好塩性古細菌Fdと同様,N末端ならびにC末端がほうれん草Fdより長く伸びており,この領域が耐塩性に関与している可能性が示唆された. 次に,大腸菌におけるH.japonica Fd遺伝子の発現を試み,N末端にT7tagもしくはグルタチオンS-トランスフェラーゼを結合させた形での融合発現に成功した.これら2種の融合タンパク質の精製を行ったところ,いずれにおいてもクラスターが組み込まれていないことがわかった.
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