研究概要 |
本研究の目的は「生物が持つ柔軟な反応場の特徴を転移点近傍における溶媒の微妙な構造変化を内包した化学反応場(細胞疑似空間内反応場)と考え,(1)数μm程度のミセル又は高分子マイクロカクプセルで細胞疑似空間を合成し,顕微鏡マニュピレーションにより,その空間内に相分離系2相溶液,液晶,高分子多成分溶液,などを注入し,細胞疑似空間反応場を作製する,(2)作製した細胞疑似空間内での温度誘起相転移現象を,顕微鏡画像処理法や顕微鏡スペクトル分光法や顕微鏡時間分解スペクトル分光法などを用いて,測定及び解析を行う,(3)作製した細胞疑似空間内での温度誘起相転移点近傍において,化学反応を行い,機能構造形成の基礎的物理化学的性質の知見を明らかにすることである。 平成9年度において、顕微鏡下での精密な温度制御に基づいた画像の取り込み、DSCの測定、金光透過度の測定、高速スペクトル分光、などの測定システムの構築を行った。 平成10年度において,測定された画像の解析,時間分解発光減衰曲線の解析,光透過度変化による拡散係数の解析,などの解析システムの構築を行った。これらの測定及び解析システムを用い,細胞疑似空間としてのPNIPAゲルの体積相転移ダイナミックスと混合液晶系の構造相転移ダイナミックスの研究を行った.PNIPAゲルの体積相転移の研究は,(1)相分離現象とカップルして進行し,ベキ数則で解析可能であること,(2)2種類のドメイン形成があること,(3)収縮に伴って,低分子の拡散係数が減少すること,などを見い出した.本申請課題により,動的な機構が明確に議論することが可能となった。
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