研究概要 |
1. 分光エリプソメトリによるMOVPEのその場観察: 本研究では,分光エリプソメトリを用いたMOVPEのその場観察を試み,特に成長表面状態の観察が可能であることを示した.その知見を応用して,1〜3分子層の厚さを有するInGaAs/InP量子井戸を作製し,それをCTR法によって評価したところ,従来のどの報告例より優れた信号が得られ,界面は実際に単分子層オーダの急峻性を有することが示された. 2. 流れ方向成長速度/膜質分布の解析とそれを応用した成長条件の最適化: InPおよびGaAsの原料ガス流れ方向の成長速度分布,膜質分布を,特別に作製したサセプタを用いて実験的に調べ,その結果と本研究で新たに開発した成長シミュレータによる結果とを比較考察した.これを基に,高温時に発生する表面荒れのメカニズムを特定し,表面荒れを回避する成長条件を論理的に決定することに成功した. 3. 有機金属気相拡散選択エピタキシー技術の開発: モノリシック光集積回路において能動素子と受動素子を一括集積化する技術として,有機金属気相拡散選択エピタキシー(metal-organic vapor phase diffusion enhanced selective area epitaxy;MOVE)を新たに開発した.これを用いて,1.55μm帯における能動領域と受動領域のバンドギャップ差を,組成の差のみの場合で200nm,組成と量子井戸層厚の差の両方を利用できる場合で500nmと,従来に比べ格段に大きくすることに成功した. 4. 面積選択MOVPE成長のシミュレーション: MOVPEによる選択成長を統一的に理解することを目的として,シミュレータの開発を行った.横方向気相拡散効果と表面マイグレーション効果を独立に扱うことのできる2次元モデルを使用してシミュレーションを行った結果,実験事実を説明することができ,従来の選択成長では表面拡散チャネルが優勢であること,一方MOVEでは気相拡散チャネルが優勢であることが明らかになった. 5. MOVEによる光素子・集積回路の試作: MOVEは,導波路アレイを作製することのできる世界で唯一の選択成長技術である.この特徴を利用して,1×2多モード干渉(MMI)合/分波器を,選択成長によって世界で初めて試作,実現した.さらにMOVEによる能動/受動集積を適用して,光交換で必要とされる光アンプゲートスイッチ集積回路を世界で初めて試作し,その動作を確認した.
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