研究概要 |
LSI(大規模集積回路)においては、電流によって配線中の原子が移動する(エレクトロマイグレーション)ことが知られている.一方,LSI配線には大きな応力が負荷され,この応力によっても原子が移動する(ストレスマイグレーション).これらの原子マイグレーションよって配線内に欠陥(キャビティ)が生成・成長し,断線に至ることがLSIの信頼性の点から大きな問題となってきている.とくに,配線の微細化とともに電流密度と応力は上昇するため,その破壊過程を明らかにすることが将来のLSI開発においていっそう重要となる.そこで,本研究では特殊な有限要素法に基づいて,多結晶配線の応力誘起の原子マイグレーションによるキャビティ成長シミュレーションを行い,その成長機構を明らかにした.とくに,界面が大きな影響を有することが明らかになった.つぎに,電流に起因する原子マイグレーションによってキャビティが移動する現象について検討し,エレクトロマイグレーションの基本的なシミュレーション方法を確立した.これらを基に,電流と応力が競合する条件の下におけるキャビティの成長シミュレーション法について検討するとともに,特殊な有限要素法を応用して多結晶配線への適用法の確立を図った.これに基づいてその破壊機構および過程について検討を進めた結果,電流のみではキャビティ成長速度は小さいこと,電流が誘起する原子流れによって粒界上に応力分布が発生すること,キャビティの成長はこの応力による原子の流出に律速されていること,が判明した.
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