研究概要 |
本研究が対象としているMBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)とは,基板に付着した分子が表面拡散する途上において,基板上のポテンシャルエネルギの低い位置で捕捉されて結晶成長(成膜)が行われることである.したがって,結晶成長の進行とともに同エネルギは分子レベルで均一になるため,最終的にその表面は分子オーダの平滑面になると考えられる.しかし,プロセスそのものは明確化されていないので,本研究では,その平面創成プロセスを明らかにすることを目的に,単結晶シリコン(Si)基板上にSiを成長させる場合について,MBE装置に直結した分析チャンバを設備し,加工プロセスを離散的ではあるが,時間を追って観察した. その結果,基板温度800℃の成膜の初期過程において基板上に形成される幾何形状は,もとの基板の面方位が(111)の場合には,平坦な2次元的な形状の平滑な面が創成されるが,その他の(110)や(100)といった基板面方位では,3次元的な形状が創成されることを明らかにした.そして,これらの形状は,もとの基板を構成するSi分子のダングリングボンドの方向とその密度に相関があることを明らかにした.つまり,幾何形状の創成はダングリングボンドの方向に進行する傾向があった.さらに,基板面方位によっては,成膜初期過程に形成された3次元的幾何形状が,成膜の進行につれて,2次元的幾何形状に変化していき,最終的に平滑な面の創成となることを明らかにした.
|