研究概要 |
本研究は,シリコンウエハのような薄物部品を極低歪で位置決め固定し,例えば半導体の露光プロセスで生ずる微少な加工力や搬送時の微少な加速度や振動の作用に対しても被固定部品の位置を保持可能な,新しい固定装置を開発することを目的としている.微少固定力の発生機構に電気粘性流体を応用したクランピング機構を採用することを提案し,これによって被固定部品に作用する固定力を微少に制御可能なものとする.本研究は,平成9年度から2年間の計画で遂行され,以下のような成果が得られた. (1) 電気粘性流体の特性解析と低歪み固定装置の設計と製作 電気粘性流体に印加する電場の強さと,発生する降伏応力の関係について,微粒粉体とシリコンオイルの混合比,微粒粉体の直径,電極面積と電極面の形状や粗さ,電極間隔などをパラメータとして実験的な解析が行われ,低歪み固定装置の設計に必要な基礎的特性が明かにされた.さらに,解析結果にもとづいて,低歪み固定装置の設計と製作が行われた. (2) 製作した固定装置の性能評価 製作した低歪み固定装置の基本的な特性の評価が行われた.その結果,固定装置の基本的な性能は,当初の見積もりどおりほぼ達成されたが,使用する電気粘性流体の組成や,装置の駆動案内機構,電極のすきま等に改善の必要があることが明かとなった. (3) 装置の改良 固定装置の転がり案内部分の低摩擦化を中心に改良を行った.その結果,本研究で提案する装置では,これまでの固定装置のように被固定体に対するクランパの接触検出や力制御等を必要とせず,数gの固定力で薄物部品を低歪みで固定可能であることが確認された. 以上,2年間の研究結果をとりまとめ,電気粘性流体を用いた薄物部品の低歪み固定装置の実用化への指針を提示し,具体的な提案を行うことができた.
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