研究概要 |
かみあいねじ部が"抜け"て締結機能が喪失するねじ山のストリッピングは,大事故に繋がる可能性が高く,その防止は極めて重要である。本研究では,このようなストリッピング発生のメカニズムを解明することに目標を置き,作用する負荷の種類及びボルトと組合せられるナットの仕様を変化させた場合について,実験及び解析の両面から検討を行った。まず,静的引張り負荷が作用する場合,めねじの剛性やめねじ材料の広範囲な組合せに対して,Alexander理論の考え方が十分拡張可能であることを実験的に確かめ,さらに接触条件を厳密に考慮したFEM解析によって,各ねじ山毎の荷重とせん断面積の関係から,静的荷重下でのストリッピング発生のメカニズムが説明できることを明らかにした。 動的負荷試験では,鋼製ナットの高さを低くした場合に,ボルトねじ山のストリッピングが,アルミニウム合金製ナットを用いた場合にナットねじ山のストリッピングが発生したが,前者では,ねじ谷底に発生した通常の疲労き裂やその他の原因で,各ねじ山の荷重分担率及びせん断面積が変化するという"静的メカニズム"による破裂の可能性が大きいことが確かめた。一方,アルミニウム合金製ナットの場合,ナットの谷底に,せん断方向に走る疲労き裂が確認された。このき裂の方向は,FEM解析での最大主応力の方向と一致し,さらに,その大きさは,疲労破壊を十分に発生させ得るレベルのものであった。 このように,本研究の結果,ストリッピングというマクロな破壊モードが,ねじ谷底の応力分布やねじ山の変形挙動というミクロな"メカニズム"と関係づけられ,それによって,ねじ結合部設計のための重要な指針が得られた。
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