研究概要 |
微細な液滴を含む気流中を伝ぱする衝撃波背後の緩和過程について実験および数値解析により調べ,衝撃波の分散について考察した.ミー散乱を利用した光透過光強度測定による衝撃波の伝ぱの瞬間を捉えた2次元可視化画像から,液滴の半径が変化しない範囲内で,液滴の数密度の変化を求めた.この場合の数密度の変化は,速度変化に逆比例することから,速度緩和領域の長さを求め,初期液滴のサイズ,衝撃波マッハ数との関係で整理した.数値計算においては,抵抗係数を粒子直径を代表長さとするレイノルズ数とクヌーセン数で補正した式を用いて,気相と液相,それぞれに対する圧縮性N-S方程式をTVDスキームで解いて実験結果と比較した.実験結果は,緩和距離が衝撃波マッハ数の現象と共に顕著に増加する傾向を示している.これに対して,数値解析の結果は,増加の程度が実験結果よりも小さく,気相と液相間の運動量輸送係数(または抵抗係数)の補正が必要であることが明らかとなった.その原因は,微細粒子がクラウド状に分布すること,非定常なプロセスであることなどがあげられる.さらに,弱い衝撃波の伝ぱのプロセスにおいて,運動量の緩和が,二相間の力のバランスを通じて,圧力の分布に与える影響について,圧力測定を行なうことによって調べた.ミストが存在する場合と,気相単体の場合との圧力波形について,衝撃波マッハ数1.4から2.2の範囲で実験を行なった結果,光学計測で得られた運動量緩和の範囲内で,およそ,両者に大きな差が生じ,その差は,運動量緩和距離の数十倍の距離を経て,平衡に達することが確認された.また,ミストがある場合の圧力波形には,高周波数成分の変動が,急激に減衰しており,二相流において,音波の伝達において高周波数成分の透過率が急激に減衰することが確認された.圧力計測より,運動量緩和により衝撃波の波面が完全分散型の波形に近づくことが確認された.これに対し数値解析の結果は,分散を示さず,粘性抵抗の考慮に改善が必要であることが明らかとなった.
|