研究概要 |
ラジカルを混合気に注入することによって,反応を促進して着火状態を向上させることが可能となる.ラジカル注入の方法には二つあり,一つは高温概燃ガスを未燃ガスに噴射して,含まれるラジカルを利用する方法であり,もう一つは紫外光を分子に照射して光化学分解反応を誘起して,ラジカルを作る方法である.本研究では,これらの二つの方法を追究して,以下の主要な結論を得た. (1)静止混合気体着火過程のシミュレーション: 反応機構が単純なオゾン一酸素混合気中に,0ラジカルを注入した場合,混合気を高温にした場合,又高温・ラジカル注入の場合について,0次元の反応シミュレーションプログラムを開発し,主要な素反応経路を見つけ,ラジカルと温度上昇の影響を調べた.又,平面・線・球対称1次元反応流れ場のプログラムを開発し,ラジカルや温度が不均一に分布する場での火炎の形成と伝播過程を計算した.通常の点着火から火炎が伝播する過程と,顕著な火炎伝播が起きずに場全体が体積的に着火する過程について,どの様な条件が二つの場合を分けるかを追究し,その条件を明らかにした.又,点着火からの火炎伝播過程を解析して,火炎燃焼速度を求めたが,従来の実験結果と数%以内の違いであった. (2)水素一酸素反応系の解析: 反応追跡のプログラムを作成して,水素一酸素混合気中に0,H,OHラジカルを注入した場合の影響を調べた.各素反応の各化学種の時間変化に対する寄与率と,発熱に対する寄与率を解析した.ラジカル注入による反応機構は,前半のラジカルの影響が顕著に表れる反応誘起過程と,後半の熱爆発過程に分かれる.後者は,加熱着火の場合と同じ挙動を示す.混合気の初期エンタルピーを固定して,ラジカル注入着火の場合と加熱着火の場合を比べると,前者の方が10^<-2>〜10^<-3>小さいエンタルピーで同程度の反応誘起時間を得られることが分かった. (3)水素一酸素一二酸化窒素混合気のレーザー着火実験: Nd:YAGレーザーの3倍波355nmを水素一酸素一二酸化窒素混合気に照射して,二酸化窒素の光分解を誘起して,0ラジカルを生成し着火を起こした.着火の自発光の時間変化は,CCDカメラのタイミングをずらして撮影して観測した.測定した着火遅れ時間と反応シミュレーションの結果を比べると,入射レーザーパワーの低下とともに着火遅れ時間が急激に増加する傾向は一致した.
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