研究分担者 |
小林 泰男 日本鋼管(株), 総合材料技術研究所, 鋼材研究室長
藤井 堅 広島大学, 工学部, 助教授 (60127701)
中村 雅樹 福山大学, 工学部, 助手 (80164333)
上野谷 実 (上野 谷実) 福山大学, 工学部, 教授 (40034376)
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研究概要 |
本研究は高架橋を支える鋼製橋脚のように不静定次数の低い鋼構造物に過大な地震力が作用する場合,大きな塑性変形性能(ダクティリティー)が発揮できるような構造システム(せん断型塑性リンクと呼ぶ)を開発しようとするものである.門形ラーメン橋脚に水平地震力が作用する場合,せん断型塑性リンクは交番に作用するせん断力により横ばりの腹板に形成される斜張力場を利用して地震エネルギーを吸収し,大きなダクティリティーを確保する構造システムである.このせん断型塑性リンクの力学特性を明確にするために,12体の模型桁について繰り返しせん断載荷実験を行った.模型桁は溶接I形桁で,桁長と桁高がそれぞれ2240mm,800mmである.ウェブは垂直スチフナーで2パネル(800×800mm×2)に仕切り,ウェブ厚は3種類4,5および7mmである.フランジ幅と厚さはそれぞれ300mm,12mmである.ウェブの鋼種は普通鋼材(SM400)と低降伏点鋼材(LY100)である.載荷実験は変位制御で行い,座屈挙動,耐荷力および変形性能について調べた.実験結果によると,普通鋼桁の場合,ウェブの片パネルのみ崩壊し,2〜3サイクル目で最大荷重に達する.それ以後,耐荷力はやや低下するが,張力場作用によって一定になる.しかし,フランジの変形が大きくなると,この一定耐荷力は低下し,エネルギー吸収量も低下する.また,低降伏点鋼桁の場合,ウェブは両パネルが崩壊し,耐荷力はひずみ硬化により36〜40サイクルまで徐々に増加して一定になる.フランジの変形は少なく,耐荷力はほとんど低下しない. 本研究の結果,次の事項が明らかになった.繰り返しせん断荷重を受けるウェブパネルの耐荷カは非常に大きいせん断変位まで一定であり,エネルギー吸収量はせん断変位に比例して増大する.耐荷力およびエネルギー吸収量はウェブ厚が厚いほど向上し,低降伏点鋼のエネルギー吸収率は普通鋼よりかなりよい.
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