研究概要 |
本年度は本研究の最終年度にあたり,残されたラングミュアー渦の観測と過去3年間の研究成果の取りまとめを遂行した. 過去の観測結果の解析は年度の初めに実施した.まず,浚渫の進んだ石狩川における界面抵抗係数を算定しなおした.その結果,界面抵抗係数f=CΨ^<-0.5>の定数Cは河川流量の増加、又は、塩水楔全長の減少につれて増大させる必要があることを明らかに出来た.解析が途中であるため詳細な無次元経験則は提案し得ないが,およそ,次の関係がある. C=0.05e^<0.006Q> ここに,Cは界面抵抗係数の定数,Qは河川流量(m^3/sec)である. ラングミュアー渦の観測は計画どおり3回実施された.観測は船上からの観測の限界である風速5m/secまで行われた.観測は1回目は風速3m/sec以下,2回目は風速5m/sec以下で風向が流下方向,3回目は風速5m/sec以下で風向が上流方向という条件下で実施された.風速5m/secという条件下ではラングミュアー渦の発生が予想されたが,実際には,その発生を確認出来ず,同種の観測は少なくとも風速10m/secまで拡張すべきことが明らかになった.しかし,3回目の観測結果からはきわめて重大な知見が得られた.この観測時にはフェッチの関係で波浪が発達したが、同時に,よい低周波の波動も発生しており,両波動による合成振動流が水深4m以下まで達していることが観測された.従来,風速5m/sec程度でも界面を通じた塩分拡散が著しく増大することが観測されていたが,この風速条件はラングミュアー渦の発生条件に近く、上記塩分拡散はこの渦によると判断された.しかし,今回の観測結果から,ラングミュアー渦以外の塩分拡散機構のあることが判明したことになり、今後の研究に与える影響はきわめて大きいと言える.
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