研究概要 |
本研究は,交通サービス供給および交通需要の状態記述に関して要求される基本的条件を具備した動的な交通ネットワーク配分モデルを数理的に構築する.ただし,シミュレーション・アプローチ等による様々なモデルに対するベンチマークとなりうる理論を構築するために,本研究では,利用者の反復行動による学習・フィードバック機構条件について,動的(利用者)均衡の考え方を採用したいくつかの数理モデルを構築する.そして,それらモデルについて,(1)変分不等式問題の枠組みに基づいたモデルの統一的記述,(2)基本特性・各モデル固有の特性の解析,(3)大域的収束が保証され大規模ネットワークで適用可能な効率的アルゴリズムの開発;を行い,さらに動的均衡解の各種安定性に関する理論を構築することが本研究の目的である.平成9年度は,多起点・1終点および1起点・多終点のネットワークの各々の場合におけるa)経路選択のみの動的均衡モデル,b)経路選択と出発時刻の同時均衡モデルを構築し・解析した.より具体的には,各モデルについて,以下の3ステップを完了した: Step1 モデルの構築(基本的定式化と変分不等式問題等の標準型への変換等), Step2 モデルの基本特性解析(解の存在・一意性やモデル固有の特性の理論的解析), Step3 モデルの計算法開発(大域的に収束的かつ効率的なアルゴリズムの開発). さらに,多起点・1終点および1起点・多終点の各ネットワークでの解析結果の比較によって,“ネットワークの方向性"と動的フロー・パターンの間の理論的関係を明らかにした.これは,従来の静的な配分理論の枠組みでは正しい表現・考察が困難なものであり,交通ネットワーク・フローの特性に関する全く新しい知見を与えるものである.
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