研究概要 |
風速分布特性に及ぼす地形形状別の影響を実測的に明らかにするために,九州地区で展開している広域高密度風観測システム(NeWMeK)の観測データを用いて,その風速分布解析を行い,以下の知見を得た。 1.九州地区内121ヶ所の観測点データから等風速分布図を作成し,視覚的に強風特性を検討できるシステムを開発した。また,局地的に特異な強風特性を示す地域の例として,福岡市西部地区が南よりの風向に対してのみ強い突風率を示すことを検証した。 2.数値地図情報データ(50mメッシュ)を利用して,観測点(121箇所)周辺の地形形状を東西南北の4方向別に9タイプ(平坦,山麓吹上げと吹下ろし,山腹吹上げと吹下ろし,谷間に平行と直角,山頂に平行と直角)に分類整理した。 3.NeWMeK観測点の風速計の設置高度は地上高30〜190mの範囲にばらついているので,風速計設置高度の均一化を行うために,各観測点の風向別の風速補正係数を選定した。補正係数を適用した風速値を用いた風速分布時系列解析結果を比較検証したところ,風速計の高さ補正を行う前後で全体分布に大きな変化が見られなかった。 4.次いで,九州地区全体に一定風速分布を仮想的に与えた場合に,地形の影響によって起きる増速予測をLSD法で行い,この結果を仮想風速分布として視覚化した。これらの結果は,九州全域でほぼ同じ風向を維持する冬季と春季の季節風時の風速分布状況に十分な対応を示した。また,九州地区での増速係数分布図を作成し,地形の影響による強風域を風向別に示した。しかしながら,LSD法が適用できない観測地点の存在を確認し,このような地点では別の算定手法が必要であることがわかった。 5.風速記録に及ぼす鉛直方向成分の影響の検証を行ったところ,風車型風向風速計は,傾斜風角度10度を超えると周期2秒程度に対しても応答性が不十分であることが分かった。
|