研究概要 |
天然に多産するカオリナイトを400-1000℃に加熱処理し,それをKOHおよびH_2SO_4を用いて化学的に選択溶解処理する方法で多孔体の作製について検討した.その結果,KOH処理では選択溶解性は認められず,多孔体は作製できなかったが,H_2SO_4処理では,アルミナ成分の選択溶出が可能で,シリカ質の多孔体が作製できた. 作製した多孔体について細孔特性を窒素ガス吸着により調べたところ,ミクロ細孔を有することが分かった.そこで,ミクロ細孔測定用の超低圧対応のガス吸着装置を用い,アルゴンガスを吸着ガスに用いてHorvath-Kawazoe法により細孔径分布を求めた.これらの検討から,このシリカ多孔体は約400m^2/gの比表面積で,細孔容積が約0.3ml/g,0.6nmでスリット状のミクロ細孔を有していることが分かった 水蒸気および種々の有機分子の室温でのガス吸着特性について調べたところ,ミクロ細孔に特有の吸着ガスとの強い相互作用(ミクロポアフィリング)が認められ,いずれの吸着ガスに対しても低相対圧下て急峻に吸着することが分かった.水蒸気の最大吸着量は約200ml/gで,昨年度検討した選択溶解法γ-アルミナ多孔体の吸着量の約600ml/gと比べて明らかに少なかった.スリット状で親水性のミクロ細孔を持つ多孔体という意味では新規性があるが,調湿機能の観点からはγ-アルミナ多孔体の方が優れていることが分かった. 昨年度の成果もふまえて研究を総括すると,調湿機能をさらに向上させる上では,細孔径を4-5nmに制御し,なるべく細孔容積を大きくするなどの物理的因子を改良することと,細孔表面の化学的性質を制御・設計することが重要であることが明らかとなった.
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