研究概要 |
炭化ホウ素(B_4C)などのホウ素リッチホウ化物は、高温安定性が優れ、1000K以上の温度域でも性能指数(Z)がさらに増加することから、高温熱電材料として有望である。B_4Cのゼーベック係数(α)は構造欠陥に大きく依存することから、B_4C中に第二相を微細に分散させ、積層欠陥や粒界などを導入することにより、複合材料のαが増大することが期待される。また、電気伝導度(σ)の高い第二相を分散さて、複合材料のσを大きくすることにより、性能指数を向上させることが可能になる。本研究では、このような分散相として、高いαを示すSiB_4、SiB_6、SiB_<14>、SiCや、σが高いW_2B_5,TiB_2、YB_6などを選んだ。これらの複合材料を溶融凝固し、共晶や包晶反応を利用して、分散相の組織や形状を制御して、熱電性能を向上することを試みた。B-C-Si包晶系では、溶解したままの試料ではB_4C+SiB_<14>+Siの3相が共存し、熱処理によってSiの拡散固溶、SiB_4の生成、SiB_6の発生が認められた。熱処理に伴ってσは低下したが、αはある熱処理時間で極大を示した。包晶系での最大のZTは1100Kで0.4であった。B_4C-W_2B_5,B_4C-SiC,B_4C-YB_6,B_4C-TiB_2系は擬二元共晶系であり、共晶組成はそれぞれ20,50〜55、60、75mol%B_4Cで、いずれも微細なラメラ状共晶組織が認められた。YB_6やTiB_2などの第二相を少量添加することによって、ある組成でZTが極大をした。共晶系での最大のZTはB_4C-TiB_2およびB_4C-YB_6系の場合の1100Kで0.55であった。本研究によって見出されたB_4C基複合材料は、これまで知られているホウ化物の中では最高レベルの熱電性能を有していた。
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