研究概要 |
本研究は異種セラミックス材料の複合化による高強度化のための残留応カの作り込み技術の開発に関するものである.当初射出成形法と圧縮成形法の成形法の違いが成形品の特性に及ぼす影響の解明までを含めて検討していたが,研究の進行につれて,焼結速度と焼結過程でのクリープ変形特性の正確な把握が最終的な成形品の残留応力を予測するための基礎としてまず重要で,また焼結の前の脱脂工程において予想を超える大きな変形を生じることが明らかになってきたため,これらの課題を中心に検討を行った.得られた結果を以下に要約する. (1) 成形品内には射出成形時に分子の伸縮に基づく残留ひずみが作り込まれ,脱脂工程の昇温時にこれが解放されて大きな変形を生じることがわかった. (2) 焼結工程における密度の上昇は成形助剤の量に依存するが,アルミナの場合マグネシアの添加量を変えたときの焼結速度の差は1,400℃〜1,500℃において大きく,1,600℃では飽和に近づくことがわかった.そしてその結果を近似式で表示した. (3) 焼結時の応力による変形特性を両端支持梁の自重によるの変形より測定した.その結果のひずみ速度を応カ密度,及び温度による表示式として求めた. (4) 焼結助剤の量が異なる材料を組み合わせた3重構造の試験片を製作し,焼結後にひずみゲージにより切断前後のひずみ変化の測定を行った.その結果,焼結助剤の多い部分に引張りの残留応カ,焼結助剤の少ない部分に圧縮の残留応力が生じることが確認された.この結果は,適当な量の焼結助剤を含む材料を表面に配することにより表面に圧縮の残留応力を付与した構造を作ることが可能であることを示すものである. なお,複合構造の成形においてはやはり射出成形がウェルド性の点でもっとも有カな成形法になるが,射出成形工程におけるの材料の流れは成形品の表面性状やウェルド特性にも影響を及ぼすため,これらの問題についても併せて検討を行った.
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