研究概要 |
本研究により以下の結果を得た. 1. 走査型電気化学顕微鏡(SECM)の探針を自己集合的に単分子膜(SAM)を固定したガラス基板に近接させ,電気化学的にHOラジカルを発生させた.発生したHOラジカルは,探針近傍の基板表面のSAMを分解し,局所的にガラス面を露出させる.SAMの疎水性が高い場合には,この手法により基板上に親水/疎水パターンを作製することができた.このパターンを利用して,酸化還元酵素であるジアフォラーゼの微細パターンを作製できることをSECMで確認した.SAMが親水性の場合には,架橋剤を用いることにより,酵素パターンが作製できた. 2. SECMを用いて細胞活性をイメージングする手法を開発することを目的とし,動物細胞としてヒト結腸腺ガン細胞(SW-480),植物細胞としてハネモプロトプラストの培養液中でのイメージングに関して検討した.SECMの探針であるマイクロ電極で酸素還元電流を計測したところ,SW-480細胞が存在する場所で酸素還元電流が減少するイメージが得られた.これは細胞が呼吸により酸素を消費していることに起因し,SECMにより呼吸活性がイメージングできることが示された.植物細胞では,呼吸および光合成活性のイメージングが単一細胞レベルで可能であった.また,SECMにより,呼吸や光合成阻害剤の効果を定量的に解析することができた. 3. SECMの探針であるマイクロ電極をハネモプロトプラスト細胞膜に近接させ,酸化還元電流を計測し,その応答を定量的に解析することにより,細胞膜の膜透過性を一個の細胞レベルで決定した.その結果,Fe(CN)64-,Fe(CN)63-の膜透過係数は10-4cm/s以下であり,ヒドロキノンは2×10-20cm/sであった.
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