研究概要 |
本研究では安定な層状構造を有し、電子伝導性の高いグラファイト層間化合物(GIC)に着目し,遷移金属塩化物 をインターカラントとする化合物について,そのリチウム電池正極材料としての評価を行うことを目的としている. 二酸化コバルトの第1ステージのGICであるC_<5.5>CoCI_<2.2>を正極として,電解液の有機溶媒の違いによる放電挙動の違いと放電前後の結晶構造の変化について検討を行った.種々の溶媒を用いて放電挙動を調べたところ,放電時の電位には大きな違いはみられなかったが,放電容量には差異が認められた.これは溶媒分子とリチウムイオンとの溶媒和エネルギーの違いを反映していると考えられる.放電後の電極のX線回折測定の結果から,GICの結晶構造を維持したままリチウム挿入することは困難であることがわかった.またこの化合物は充電することはできなかった. 次に高い酸化状態にある五塩化ニオブの第4ステージのGICであるC_<24>NbCI_<5.2>について検討を行った.この化合物を正極として放電を行ったところ,ニオブの5価から4価への還元過程ではGICの結晶構造を維持したままリチウムイオンが層間に挿入されていることが示唆された.しかし,ニオブを5価から4価は還元するまで放電を行った後,放電を試みたが,リチウムの脱離量はわずかであった.さらに,4価から3価への還元過程では層間から塩化物イオンが遊離し,不可逆的な反応を伴うことが明らかになった. 以上の結果から,今回検討したGICはいずれもリチウム二次電池の正極活物質として用いることはできないことが明らかになった.しかし,多様な酸化状態をとることができるイオンターカラントを低濃度で含むGICでは,結晶構造を維持したままリチウムの挿入を行うことができる可能性が示唆され,GICを用いた新規な正極材料開発の指針を得ることができた.
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