研究概要 |
多置換テルペノイドクロマンの位置選択的・エナンチオ選択的合成法を確立し、生理活性を有する天然および非天然有機化合物の合成へ応用することを目的として検討を進めてきた。 1.鎖状モノテルペンアルコールを出発原料として、フェノール類との[2,3]シグマトロピー転位反応によるオルトアルキル化反応により、クロマン前駆体の2-置換フェノールを収率よく合成する方法を確立した。得られた化合物を脱硫、脱保護、保護を経てエポキシドに誘導し、さらに酸触媒を作用させて3-ヒドロキシクロマンを位置選択的およびジアステレオ選択的に得ることに成功した。 2.位置選択的に6位を保護した4,6-ジヒドロキシフタリドの合成について検討し、新しい有効な方法を確立した。しかしこの化合物はシグマトロピー転位によるアルキル化反応に適さないことがわかった。 3.そこで合成計画を変更し、フタリドの前駆体を用いて先ずアルキル化を行い、次にクロマン部を構築し、最後にフタリド部を構築することとした。そしてこの方針に適合する出発フェノール誘導体は3位を保護した3,5-ジヒドロキシ安息香酸エステルまたはアミドであることを見い出した。 4.3,5-ジヒドロキシ安息香酸エチルと3,3-ジメチルアクロレインアセタールとから、ベンゼン環上に2種類の官能基を有する3-ヒドロキシクロマンを別途合成し、環ホルミル化を行ったところ、目的とするホルミル体が位置選択的に生成した。これを還元、酸処理することにより最終目的物の多置換クロマン骨格を構築することに成功した。 5.N,N-ジエチル-3-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸アミドと2,3-ジヒドロキシイソペンチルスルフィド誘導体とから上に述べた方法を用いて3-ヒドロキシクロマン骨格を有する安息香酸アミドを合成し、環ホルミル化を経由して5員環ラクトン骨格を構築することに成功した。すでに3-ヒドロキシクロマンはジアステレオ選択的に構築できることが確立しているので、これにより生理活性多置換テルペノイドクロマンをジアステレオ選択的に構築する合成経路を確立することができた。
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